コラム 古い家具の塗装は、なぜ剥がすのか
杢庵 杉浦 修
古い家具を前にして、お客様からよく聞かれるのが「塗り直すと、味わいがなくなりませんか」という言葉です。もっともな心配だと思います。私も、できるなら今ある塗装を残したいと考えています。ただ、長い年月のあいだに何度も塗り重ねられた塗膜は、ひび割れ、白く濁り、木目を覆ってしまうことがあります。そうなると、洗って磨くだけでは本来の艶が戻りません。その場合に限って、塗装を剥がして塗り直します。
剥がす前には、必ず目立たない場所で試します。塗料の種類によって、使う薬剤も削る強さも違うからです。明治・大正期の家具にはシェラックや漆が多く、昭和のものにはラッカーが多いので、見分けるだけで半日かかることもあります。
剥がしたあとの素地には、使われてきた時間が残っています。手の触れた角の丸み、小さな凹み、脚の擦れ。それは消さずに、仕上げの下に残します。きれいにするのではなく、これからも使えるようにする。それが私の修復の考え方です。
迷われたときは、写真をお送りください。残せるものは、残す方向でご提案します。
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